スーパーの鮭やサーモン売り場には、銀鮭や秋鮭、甘口や中辛、天然や養殖と、いろいろな商品が並んでいます。
どれを買えばいいのか分からず、結局いつも同じものを選んでいませんか。
私も、なんとなくお得そうなものを選んでいました。
先日、売り場の値札を見比べてみたら、秋鮭と銀鮭が、どちらも100g 298円。 まったく同じ値段でした。
でもこの2種類、栄養の成分表を比べると、脂の量が3倍以上違います。
同じ鮭でも、種類によって育ち方も獲れ方も違います。味も、向いている料理も変わってきます。
水産関連の仕事に10年以上携わってきた私が、鮭・サーモンの種類一覧と、売り場で見るべき3つのポイント、そして秋鮭と銀鮭を実際に焼いて比べた結果までまとめました。
結論から言うと、選ぶポイントは3つ。全部、値札に書いてあります。
最後まで読むことで、今日の献立に合う鮭を、売り場で選べるようになります。
鮭・サーモンの種類一覧

まず、一般的なスーパーの売り場に並ぶものを比べてみます。
| 呼び名 | 標準和名 | 天然/養殖 | 主な産地 | 脂 | 迷ったら |
|---|---|---|---|---|---|
| 秋鮭 | シロサケ | 天然 | 北海道 | 少なめ | 鍋、ちゃんちゃん焼き |
| 時鮭 | シロサケ | 天然 | 北海道 | ほどよい | 塩焼き(高級品) |
| 紅鮭 | ベニザケ | 天然 | ロシア、アラスカ | 少ない | 塩焼き、おにぎり、お茶漬け |
| 銀鮭 | ギンザケ | 養殖 | 宮城、チリ | ほどよい | 塩焼き、西京焼き |
| トラウトサーモン | ニジマス | 養殖 | チリ | 多い | 刺身、フライ |
| アトランティックサーモン(ノルウェーサーモン) | タイセイヨウサケ | 養殖 | ノルウェー | 非常に多い | 刺身、ムニエル |
| キングサーモン | マスノスケ | 天然・養殖 | アラスカ、カナダ | 多い | 刺身 |
「サーモン」と「鮭」は、何が違うのか
よく聞かれますが、明確な線引きはありません。
ざっくり言えば、日本で昔から食べてきたものが「鮭」、海外から来た養殖のものが「サーモン」と呼ばれる傾向があります。ただし例外も多く、厳密な区別ではありません。
実用的にいちばん大事な違いは、生で食べられるかどうかです。
スーパーで「サーモン」として刺身で売られているものは、ほぼ養殖で、冷凍を通っています。
一方、「秋鮭」「紅鮭」などの切り身は、加熱して食べるものです。
理由は次の章で説明します。
ちなみに、鮭は白身魚です
あの色を見ると赤身に思えますが、農林水産省は鮭を白身魚に分類しています。
赤身か白身かは、筋肉に含まれる色素タンパク質の量で決まります。100g当たり10mg以上なら赤身魚。鮭はこれに満たないため、白身魚です。
あのオレンジ色は、アスタキサンチンという別の色素によるもの。エビやカニの殻が赤いのと同じ仲間で、餌から取り込んでいます。
選ぶポイントは、3つあります
| ポイント | 見るところ |
|---|---|
| ①生食用か、加熱用か | 値札の「刺身用」「加熱用」 |
| ②生鮭か、塩鮭か | 値札の「甘口」「中辛」「辛口」 |
| ③脂の量 | 種類の名前 |
順番が大事です。
①が決まれば料理の半分が決まり、②で味付けの自由度が決まり、③で仕上がりが決まります。
ポイント①|生食用か、加熱用か

いちばん最初に見るところです。
刺身にしたいなら、ここで決まります。
ここで一つ、誤解されがちなことがあります。「加熱用」は、鮮度が悪いという意味ではありません。
鮮度が落ちて生で食べられなくなったもの、という場合もあります。
ただ、鮮度が良くても「加熱用」として売られるものがあります。
天然の鮭には、アニサキスなどの寄生虫がいることがあります(厚生労働省)。
生で食べるには冷凍などの処理が必要なので、その処理をしていないものは「加熱用」として並びます。
覚えておくことは一つだけです。「生食用」と書かれていないものは、加熱して食べる。
ポイント②|生鮭か、塩鮭か

塩鮭を買うと、料理が絞られます。
塩焼き、おにぎり、炊き込みご飯など、味付けはもう決まっているので、そこから動かせません。
生鮭なら、何にでもできます。 その代わり、自分で味を決める必要があります。

甘口なら、どのメーカーでも同じ塩加減ということですか?
これが、なかなか厄介な話です。後ほど詳しく書きます。
なお、子どもや離乳食に使うなら、塩鮭ではなく「生鮭」を選んでください。 塩分を自分で調整できます。
ポイント③|脂の量

ここが、いちばん見落とされています。
日本食品標準成分表の数値を並べると、こうなります(可食部100g・生)。
| 種類 | エネルギー | 脂質 |
|---|---|---|
| 秋鮭(しろさけ) | 124 kcal | 4.1 g |
| 紅鮭 | 127 kcal | 4.5 g |
| キングサーモン(ますのすけ) | 200 kcal | 12.5 g |
| 銀鮭(養殖) | 188 kcal | 12.8 g |
| トラウトサーモン | 224 kcal | 14.2 g |
| アトランティックサーモン(養殖) | 223 kcal | 17.0 g |
秋鮭と、アトランティックサーモンで4倍以上。
そして——写真の値札を見てください。
- 北海道産 秋さけ切身(加熱用)…… 100g当たり 298円
- 宮城県産 銀さけ(養殖・解凍)…… 100g当たり 298円
まったく同じ値段です。 それでいて、脂質は4.1gと12.8gと3倍以上違います。
値段からは脂の量がわかりません。そのため、鮭の種類を覚えておく意味があります。
なぜ同じ値段なのか|値段の決まり方が違います
そもそも、天然と養殖では値段の決まり方が違います。
| 天然(秋鮭・紅鮭など) | 養殖(銀鮭・サーモンなど) | |
|---|---|---|
| 並ぶ時期 | 獲れる時期だけ | 通年 |
| 量 | その年、その日次第 | 計画的 |
| 値段 | 主にセリで決まる。旬でも上がりやすい | 安定している |
秋鮭は、秋にしか獲れません。
旬を過ぎたら高くなるのではなく、並ばなくなります。
一方、養殖の銀鮭は計画的に育てられるので、量も値段も安定しています。
秋鮭を見かけたら、それはその時期だけのものです。
脂は、部位でも違います
同じ鮭でも、ハラス(腹側)は特に脂が多い部位です。
種類だけで決まるわけではないので、切り身の形も見てみてください。
今日はどれを買えばいい?迷ったらこれ
どの鮭でも、どの料理も作れます。
ここに書くのは、迷ったときの目安です。
| 料理 | 迷ったらこれ | 理由 |
|---|---|---|
| 塩焼き | 銀鮭 | 脂がほどよく、焼くだけで決まる |
| 刺身 | トラウト・アトランティックサーモン(生食用の表示があるもの) | ポイント①で決まります |
| ちゃんちゃん焼き・石狩鍋 | 秋鮭 | 味噌とバター、汁が水分を補う |
| ホイル焼き | 秋鮭 | 水分を逃がさない |
| ムニエル | 秋鮭 | バターで油を補える |
| フライ・竜田揚げ | 秋鮭 | 衣が水分を閉じ込める |
| 炊き込みご飯・おにぎり | 塩鮭(紅鮭) | 塩気がご飯に移る |
| チャーハン・混ぜご飯 | 紅鮭 | 身が締まっていて、ほぐれやすい |
考え方はシンプルです。
- 脂が少ない秋鮭・紅鮭 …… 水分や油を足す料理が合う
- 脂がほどよい銀鮭 …… 焼くだけで成立する
- 脂が多いトラウト・アトランティックサーモン …… 刺身や、油を足さない料理
北海道で秋鮭がちゃんちゃん焼きや石狩鍋で食べられてきたのには、理由があります。
秋鮭と銀鮭、実際に焼いて比べました
同じ値段で買った秋鮭と銀鮭を、グリルとフライパンで焼いてみました。
- 塩はふらない
- どちらも表9分・裏3分
- グリルは片面焼き、予熱なしの中火
- フライパンは中火。油はひいていない

まず、重さの変化から。
| 焼く前 | 焼いた後 | 縮み率 | |
|---|---|---|---|
| 秋鮭・グリル | 90g | 70g | 22.2% |
| 銀鮭・グリル | 84g | 65g | 22.6% |
| 秋鮭・フライパン | 79g | 63g | 20.3% |
| 銀鮭・フライパン | 79g | 60g | 24.1% |
どれも2割ほど縮みました。種類による違いは、はっきりしません。
1切れずつしか焼いていないので、この程度の差は誤差だと思ってください。

重さでは差が出ませんでした。でも、別のところにはっきり出ました。
脂の出方が、まるで違いました

写真を見てください。 右の銀鮭の下には、脂が溜まっています。
左の秋鮭からは、まったく出ませんでした。
脂質は秋鮭が4.1g、銀鮭が12.8g。成分表の数字が、そのまま目に見える形で出ました。
油をひかずに焼いたら、秋鮭だけくっつきました


どちらも油をひかずに焼きました。
グリルでは、どちらもほとんどくっつきませんでした。
秋鮭はひっくり返すのに少し苦労しましたが、身は崩れずにすみました。
問題はフライパンです。
銀鮭も少し苦労しましたが、秋鮭ははっきりくっつきました。 写真のとおり、皮と身がフライパンに残っています。
なお、使ったのは数年使ってコーティングが弱ってきたフライパンです。
新しいものなら、結果は違ったかもしれません。
ただ、2切れとも同じフライパンで焼いています。
銀鮭は焼けて、秋鮭はくっついた。この差は、脂の差だと考えていいと思います。
銀鮭は自分から出た脂で焼けていますが、秋鮭は脂が出ません。
秋鮭をフライパンで焼くときは、油をひいてください。
焼き時間は、フライパンのほうが火が入りました
どちらも表9分・裏3分で焼きましたが、グリルはちょうどよく、フライパンは少し焼きすぎでした。
表は7分で十分だったと思います。
味は、家族で分かれました
秋鮭はさっぱり。銀鮭はほどよい脂のりで、脂っこいということはありませんでした。
そして——うちでは秋鮭派と銀鮭派に分かれました。

どちらが上、という話ではないようです。
スーパーの「生鮭」は刺身にできません
刺身用として売られているサーモンと、切り身の生鮭は別物です。
「生食用」と書かれていないものは、加熱して食べてください。
甘口・中辛・辛口に、決まった基準はありません
ポイント②の続きです。ここが、いちばん意外かもしれません。
塩鮭の「甘口」「中辛」「辛口」。実は、統一された基準がありません。
実際に測った研究があります。
| 表示 | 実測の平均塩分濃度 |
|---|---|
| 甘口 | 2.20% |
| 中辛 | 3.05% |
| 辛口 | 4.56% |
出典:山田正子ほか「塩鮭の塩分名称表示別塩分濃度の実態調査」日本食生活学会誌 34(2) 103-108(2023)
順序はきちんと守られています。
甘口を選べば、塩は控えめです。ただし、A社の中辛とB社の中辛が同じとは限りません。
研究者自身が、論文の結びで「基準を設定する必要がある」と書いています。

「いつも中辛を買っているのに、しょっぱさが違う」——理由はここにあります。
いつも同じ塩加減で食べたいなら、同じメーカーのものを選ぶのがいちばん確実です。
そして繰り返しになりますが、子ども用・離乳食には「生鮭」を。 塩加減を自分で決められます。
値札の「解凍」「養殖」が教えてくれること

ここまで何度か値札の話をしてきましたが、これらの表示は、法律で決まっています。
食品表示法にもとづく食品表示基準で、生鮮の水産物には次の表示が義務づけられています。
| 売り方 | 義務表示 |
|---|---|
| 切り身にして容器包装したもの(スーパーのパック) | 名称/原産地/消費期限または賞味期限/保存方法/解凍/養殖/生食用である旨/加工者 |
冷凍したものを解凍したものは「解凍」と表示します。 養殖されたものは「養殖」と表示します。
つまり、書いていなければ、天然で、凍っていないということです。
写真の2枚を見比べてください。
- 北海道産 秋さけ切身(加熱用)…… 何も書かれていない=天然・生
- 宮城県産 銀さけ(養殖・解凍)…… 養殖で、一度冷凍されていた
「解凍」は、輸入品という意味ではありません

解凍って書いてあると、なんだか質が落ちる気がします……

そんなことはありません。むしろ逆のことも多いんです。
写真の銀さけは宮城県産です。国産なのに「解凍」。
宮城県の銀鮭は、水揚げが4〜6月に集中します。 それ以外の時期に並ぶものは、冷凍されたものです。そうでなければ、一年のうち数か月しか食べられません。
冷凍は、質を落とすためのものではなく、質を保って届けるための技術です。
一方で解凍されたもの家で冷凍すると再冷凍になり、品質は劣化していきます。
美味しく食べたいのであればできるだけ、再冷凍するのは避けた方が良いです。
冷凍の切り身という選択

ここまで見て選んでも、売り場にいいものがない日はあります。
種類も、塩加減も、脂の量も選んで買いたい。でも売り場にあるものは、その日次第です。
そこで選択肢になるのが、通販の冷凍の切り身です。
・1切れずつ使う分だけ出せる
・家に届くので、買い物の回数が減る
・種類と脂の乗りを選んで買える(売り場の在庫に左右されない)
・骨取り済みのものもある。子どもに出しやすい
売り場の「解凍」品は、家で再冷凍すると美味しさは低下します。
でも冷凍のまま届くものなら、そのまま冷凍庫に入れられます。
まとめ
選ぶポイントは3つ。全部、値札に書いてあります
- ① 生食用か、加熱用か ……「加熱用」は鮮度が悪いという意味ではありません
- ② 生鮭か、塩鮭か …… 甘口・中辛・辛口に統一基準はありません
- ③ 脂の量 …… 同じ値段でも3倍以上違うことがあります
次の買い物で、値札の小さい文字を見てみてください。
今まで目に入っていなかった言葉が、選ぶための手がかりに変わります。
どれを買っても失敗、ということはありません。
種類が分かると、料理に合わせて選べるようになる。
それだけで、売り場が少し楽しくなります。



