冷凍された魚に対して、「パサパサする」「生臭い」「味が落ちる」 という印象を持った経験はありませんか?
私も家で魚を冷凍して、忘れた頃に冷凍庫のすみで霜まみれになり、解凍してもがっかり⋯という経験を何度もしています。
冷凍の仕方が悪かったのか、解凍の仕方を間違えたのかなど、考えたこともあるかもしれません。
実は、家庭での冷凍の方法が悪いというわけではなく、家庭で魚を冷凍すること自体に向いていない理由があるからです。
この記事では、水産関係の仕事に長年携わってきた経験から、なぜ家庭で魚を冷凍するとまずくなりやすいのか、失敗を避けるためにどうすればいいのか、冷凍の魚をうまく使うコツなどを解説します。
なぜ家庭で魚を冷凍するとまずくなるのか

家で冷凍した魚を食べた時に「まずい」と感じたことや、冷凍した魚は美味しくないというイメージを持っている人も多いと思います。
初めに、家庭で魚を冷凍するとまずくなる理由や仕組みを簡単に解説します。
家庭用の冷凍庫は「凍らせる」ための機械ではない
家庭用の冷凍庫は、急速に「凍らせる」ための機械ではなく、元々凍っている食品を保存するためのものです。
そのため、家庭用の冷凍庫では、魚を中まで完全に凍結するのに時間がかかってしまいます。
これが、冷凍の魚が美味しくなくなる最も大きな原因です。
凍結に時間がかかると魚の中で何が起こるのか
凍結に時間がかかるということは、魚の中の水分がゆっくり凍るということです。
この時、細胞の中の水分がゆっくりと凍ることで、氷の結晶が大きくなり、細胞を壊してしまいます。

これは、水分が凍るまでに時間がかかることで水分子どうしが動いて集まる時間ができるため、結果として大きな氷の粒がつくられます。
また、細胞が壊れることで、解凍した時にドリップ(赤い水分)が出てしまいます。
ドリップが多いほど、
・食感が悪くなる
・旨味が流れ出る
・生臭さを感じやすくなる
といった問題が起こります。
「解凍の方法が悪い」わけではない
冷凍の魚がおいしくなかったとき、「解凍方法が悪かったのかも」と考える人もいると思います。
しかし、実際には、解凍以前に、凍らせ方で結果が決まっているケースがほとんどです。
先ほど解説したように、細胞が壊れた状態で冷凍していたら、どれだけ丁寧に解凍したとしても、ドリップが出てしまいます。
解凍をどのように工夫しても限界があるのが実情です。
特売の生魚を冷凍すると失敗しやすい理由
家庭で冷凍される魚は、特売や賞味期限が近いもの、あるいは食べきれず余ったものなどが多いと思います。
これらは、すでに鮮度のピークを過ぎていることが多く、そこから冷凍すると失敗しやすくなります。
鮮度低下が始まっているものは、すでに細胞がもろくなってきており、冷凍で細胞が凍る際により細胞破壊が起きやすくなります。
もったいないという気持ちは大切ですが、事実として、鮮度が低下してきたものは冷凍には向きません。
「冷凍の魚はまずい」はこれまでの失敗経験から
家庭での冷凍による失敗経験が積み重なることで、「冷凍魚=まずい」というイメージがついていきます。
しかし、実際には、冷凍することが悪いのではなく、美味しい状態で冷凍するための条件が難しいというのが正しいです。
適切に冷凍された魚は美味しさを長持ちでき、好きな時に使えるなど魚料理をする上で非常にメリットが大きいです。
失敗しないためには、家庭での冷凍や魚の特徴を把握した上で冷凍の魚を活用していく必要があります。
家庭で冷凍する際に気をつけたいポイント

そうは言っても、家庭で魚を冷凍したい場面やせざるを得ない状況もあるかと思います。
そこで、家庭で魚を冷凍する際に、失敗を減らすための条件をお伝えしていきます。
冷凍しても比較的マシな魚・向かない魚
まずは、冷凍に向いている魚と向いていない魚を知っておく必要があります。
冷凍で向いているのは以下の通りです。
・脂の多い魚
・加熱調理前提の魚
逆に、「白身で水分の多い魚」や「刺身用の魚」は家庭での冷凍には向きません。
脂の多い魚は、相対的に水分が少ない身質になります。
そのため冷凍しても、氷の結晶ができにくく、また細胞へのダメージが小さくなります。
また、冷凍による食感や旨味の低下、生臭さなどは刺身で食べるときにより違いを感じます。
一方で、加熱処理をすれば、調理法や味付けなどである程度カバーできるため、品質の低下が刺身に比べて感じにくくなります。
冷凍前に絶対やること

冷凍しても美味しさを保つためには、どのように冷凍するかが肝心です。
美味しさを保つため、冷凍前に必ずやってほしいことがあります。
・表面の水分をしっかり拭く
・空気にふれさせない
・内臓や血合を残さない
水分が残っていると大きな氷の結晶ができ、解凍時に旨味が流れ出ます。キッチンペーパーで押さえるように丁寧に拭き取りましょう。
また、空気に触れると酸化と冷凍焼けが進みます。ラップでぴったり密着させ、さらに保存袋へ。できるだけ空気を抜くのがコツです。
さらに、内臓や血は臭みや劣化の原因になります。
冷凍前に必ず取り除き、洗った後は水分をしっかり拭き取りましょう。
熱を素早く取り除くためには、熱が伝わりやすいアルミバットなどの上で冷凍するのも効果的です。
保存期間の現実的な目安
家庭用の冷凍は、そもそも長期保存しないのが前提です。
理由は、業務用に比べて冷凍庫の温度が高いことや、扉の開けしめなどで温度変化が激しいことなどから、冷凍していても劣化が進むためです。
家庭用の冷凍庫で魚を保存する場合の目安としては、基本的に1ヶ月以内、できれば2〜3週間で使い切る方が良いです。
特に、脂の多い魚は酸化しやすく、1〜2週間が目安で、長期保存には向きません。
ここまでやっても限界はある
このように工夫することで、家庭での冷凍でも失敗はかなり減らせます。
しかし、どれだけ丁寧に処理をしても完全には防げない劣化があります。
その最大の理由は「凍結スピード」です。
これが最も冷凍に影響する部分であり、家庭用の冷凍庫ではどうにも対応できない部分です。
最新の冷凍技術で凍結された魚は何が違うのか

食品が凍結する温度として、−1℃〜−5℃の間は、大きな氷の粒ができやすい温度帯です。ここの温度をいかに早く通過するかがポイントです。
また、最新の冷凍技術として、氷の結晶が大きくならないようにするものもあります。
ここでは、業務用冷凍や最新の冷凍技術と家庭用冷凍との違いを解説していきます。
業務用冷凍と家庭用冷凍の決定的な違い
業務用と家庭用の冷凍庫の決定的な違いは「凍結スピード」です。
主に家庭用の冷凍庫の温度は、-18℃前後であるのに対し、業務用の急速冷凍機では-30〜-40℃で一気に冷やすのが特徴です。
また、家庭用の冷凍庫は、他のものを取り出すなどにより扉の開け閉めが多いと思います。
実は1回扉を開けるだけで5〜10℃以上温度が上がることがあります。
そこから設定の温度まで下がるまで時間がかかってしまうという問題があります。
一方で、業務用では、冷凍することが目的のため、扉の開け閉めは最小限ですませていることからもより早く凍らせることができます。
最新の凍結技術
最近では、冷凍技術の発展により、細胞を壊しにくい冷凍技術も開発されています。
例えば、液体凍結(ブライン凍結)という方法は、−15℃〜-25℃の食塩水やアルコールなどの不凍液(ブライン)に漬けて凍らせる方法です。
液体の熱伝導率(熱の伝わりやすさ)は、空気より約20倍高いため、通常の冷凍庫より圧倒的に早く温度が下がるため、氷の結晶も大きくならずに凍結します。
また、「プロトン凍結」という技術は、電磁波と冷風を組み合わせる方法で、氷結晶の成長を抑制し、細胞破壊を減らすのが特徴です。
これらの凍結方法は、専用の設備がないと難しいですが、高品質で美味しさをキープすることができます。
解凍しても生臭くなりにくい
最新の冷凍技術によって凍結された魚は、解凍してもドリップが少ないことで、臭いの原因になる成分が出にくくなります。
こちらは、真空パックの後に、プロトン凍結により冷凍されたカンパチの刺身です。

このように解凍後、少しのドリップも出ていませんでした。

臭いも全くなく、冷凍していない刺身と言われても全くわからなかったです。
ちなみに、これは魚のネット販売サービスの「サカナDIY」という商品です。

冷凍魚の失敗しない使い方

冷凍魚には「美味しい」というイメージはあまりないかもしれませんが、実際には生魚にはないメリットも多く、使い方さえ間違えなければ非常に便利な食材です。
ここでは、家庭冷凍の失敗を踏まえた上で、冷凍魚の失敗しない使い方をお伝えします。
最初から冷凍された魚を使う
冷凍魚で失敗しない最大のポイントは、最初から冷凍された魚を使うことです。
実際に冷凍魚がまずいというイメージは家庭でゆっくり冷凍された魚のことがほとんどです。
現在、流通している多くの冷凍魚は、水揚げ後すぐに下処理され、急速冷凍されるなど、品質が落ちないための処理がされています。
そのため、初めから冷凍された冷凍魚を使うことでほとんどの失敗を減らすことができます。
生魚にはない冷凍魚のメリット
冷凍で売られている魚には以下のようなメリットがあります。
・旬の状態で処理・冷凍できる
・保存期間に余裕がある
・価格や供給が安定している
・必要なタイミングで使える
生魚は時期や鮮度などによって品質はまちまちですが、冷凍で売られている魚は獲れたてや旬など「状態の良いところで止めている」ものが多いという点が大きな違いです。
また、必要なタイミングで使えるというのは、特に食材の中でも鮮度に敏感な魚にとっては、大きなメリットになります。
こんな人に冷凍魚はおすすめ
冷凍魚について、特に以下のような人にはおすすめです。
・美味しい魚の選び方がわからない
・魚料理を作りたいけど苦手
・食材ロスを減らしたい
美味しい魚の見分け方には旬や鮮度を把握することがとても大事ですが、冷凍で販売されている魚は、それらをすでに考慮されているものが多いため、美味しさが安定してるのが特徴です。
また、魚料理が苦手な場合も、下処理されていたり、必要なタイミングに必要な量だけ使えるなど、食材としての使い勝手が良いのが特徴です。
通販で冷凍のメリットを最大限活用
より冷凍魚を効果的に活用する方法として、通販を利用する方法があります。
最近は冷凍技術の発達とともに、魚の通信販売、ネット販売も増えてきています。
旬の魚を高鮮度の状態で冷凍することで、どこに住んでいても全国の美味しい魚を食べることができます。
また、買いに行く手間も減らすことができます。
おすすめの魚の通販の一つとして、地魚の定期販売ができる「サカナDIY」をご紹介します。
こちらは新鮮な旬の地魚を最新のプロトン凍結で冷凍された商品で、到着後の調理は切るだけ、焼くだけなどとても簡単に美味しい魚料理を作ることができます。
私自身も言われなければ冷凍とは全く気づかないほどの商品でした。
是非一度活用してみてください。
まとめ
冷凍の魚で失敗しない方法は、最初から冷凍されている商品を買うということです。
家庭用の冷凍庫は、そもそも、急速に「凍らせる」ための機械ではなく、元々凍っている食品を保存するためのものであるため、どれだけ丁寧に冷凍したとしても品質の低下は避けられません。
一方で、最初から冷凍されている商品は、主に旬や高鮮度の魚を、しっかりと下処理をした上で急速冷凍など品質が落ちにくい冷凍処理をしているため、美味しさが長続きします。
とくに、魚料理が苦手な方や、忙しく料理に時間をかけていられない方にとっては、冷凍の魚は強い味方になります。
最近の冷凍魚は美味しい商品もばかりですので、是非料理のレパートリーに加えてみてください。
