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スーパーの刺身にアニサキスはいる?確率と、パックの表示で見分ける方法

魚の買い方

ニュースで「芸能人がアニサキスに当たった」と聞くたび、スーパーの刺身を前に少し身構えてしまう——そんなこと、ありませんか?

実は、アニサキスは食中毒の発生件数で第1位。2023年には、食中毒全体の約42%を占めています。

しかも実際の患者数は、国の統計に出ている数のおよそ50倍と推計されています。

数字だけ見ると、ずいぶん身近な存在に思えます。

ただ、それがそのまま「スーパーの刺身が危ない」という意味になるわけではありません。

売場に並ぶまでに、いくつもの対策を通ってきているからです。

この記事では、水産の現場に10年以上携わった経験と公的機関のデータをもとに、当たる確率はどれくらいか、アニサキスが多い魚と少ない魚、パックのどこを見ればいいのかを整理します。

読み終える頃には、鮮魚コーナーで刺身を手に取るときに、迷わなくなります。

結論から言うと、スーパーの刺身でアニサキスに当たることは、かなり稀です。

主婦
主婦

ニュースで見るたびに気になってて…。買うたびに確認しないとダメですか?

まこ
まこ

いいえ。基本は気にせず買って大丈夫です。より安心したいときだけ、ラベルを1か所見てください。


そもそもアニサキスとは?

アニサキスは、魚に寄生する線虫(せんちゅう)の仲間です。

魚の体内にいるのは幼虫の状態で、大きさは体長2〜3cm、幅0.3〜0.6mmほど。

白色の、少し太い糸のような見た目をしています。渦を巻いていることが多く、生きているとゆっくり動きます。

もともとはクジラやイルカを最終的な宿主とする寄生虫で、オキアミなどの小さな甲殻類を経由して、サバ・アジ・イワシ・カツオ・サンマ・イカ・サケといった魚介類に入り込みます。

そして、生きている魚では、アニサキスは主に内臓のまわりにいます。

ところが魚が死ぬと、内臓から筋肉(身)のほうへ移動していきます。

つまり「漁獲後どれだけ早く内臓を取り、低温で管理したか」が決定的に効いてきます。

なお、人の体内に入っても成虫にはなれず、やがて死にます。

症状や治療については医療機関の情報をご確認ください。この記事は、食べる前にどう避けるかに絞ってお伝えします。


スーパーの刺身でアニサキスに当たる確率は?

実際にアニサキスに当たる確率はどれくらいなのでしょうか。

ここからは、その根拠を数字で見ていきます。

食中毒の「件数」では第1位

厚生労働省の食中毒統計によると、2023年(令和5年)のアニサキスによる食中毒は432件・患者数441人

この年の食中毒全体1,021件のうち、**約42%**を占めていて、病因物質別の件数では第1位です。

10年前の2013年は88件でしたから、約5倍に増えています。

ただし、この間に日本の海でアニサキスが5倍に増えたわけではありません。

内視鏡検査が普及して診断がつくようになり、医師からの届出も定着した——つまり増えたのは「見つかる数」であって、起きている数ではない可能性が高いのです。

実際の患者数は統計の約50倍。それでも6,000人に1人

一方で、統計の数字が実態より少ないことも分かっています。

食品安全委員会が2025年1月にまとめた資料では、診療報酬データから推計される患者数は年平均約2万人。同じ時期の食中毒統計は年平均約400人ですから、およそ50倍の開きがあります。

内視鏡で虫体を取れば症状はすぐ治まるため、食中毒として届け出られないのです。

主婦
主婦

50倍…。それはちょっと怖いです。

まこ
まこ

数字だけ見ると驚きますよね。でも年間2万人は、日本人およそ6,000人に1人です。

スーパーの刺身に限れば、さらに稀

そしてこの2万人には、釣った魚を自分でさばいた人、飲食店で食べた人、自宅で生のサバを酢でしめた人なども含まれています。

入手経路ごとの内訳を示した公的な統計は見当たりません。

ですが、次の章で説明しますが、スーパーの刺身は売場に出るまでに何段階もの対策を通っています。

それを踏まえれば、スーパーの刺身に限ったリスクは、この数字よりさらに低いと考えるのが自然です。

実務の感覚としても同じです。スーパーで買った刺身でアニサキスに当たることは、かなり稀だと思っていただいて構いません。


「解凍」表示は、危険信号ではなく安心のサイン

そのうえで、より安心して選びたいときに見るところをお伝えします。

「解凍」と書かれていたら、冷凍を通っている

刺身のパックに、小さく「解凍」と書かれているのを見たことがあると思います。

多くの方は、これを「鮮度が落ちる」「獲れたてではない」というマイナス情報として受け取ります。

売場でも、同じ値段なら「解凍」と書かれていないほうが選ばれがちです。

ですが、アニサキスに関して言えば、この判断は逆です。

「解凍」と表示されている商品は、流通のどこかで一度冷凍されています。

そしてアニサキスは、中心温度が−20℃に達してから24時間以上の冷凍で死滅するとされています(厚生労働省・農林水産省)。

業務用の冷凍設備は、家庭用とは比べものにならない低温で、短時間のうちに中心まで凍結できます。

つまり「解凍」表示は、アニサキス対策の工程を通ってきた印なのです。

まこ
まこ

アニサキスに限らず、冷凍することで安全に食べられるようにする食材は多いです。

水揚げから売場まで、3つの関門を通っている

スーパーの刺身が安心できる理由は、冷凍だけではありません。アニサキス対策は3段階で行われています。

関門1|漁獲直後の内臓除去と冷却
前に触れたとおり、アニサキスは魚が死ぬと内臓から筋肉へ移動します。だから漁獲後すぐに内臓を取り、低温で管理することが最大の対策になります。

関門2|加工場での凍結と目視検品
刺身用の多くが凍結処理を受けます。さらに、下からライトを当てる検品台の上で、身を透かして虫体を探す作業が入ります。アニサキスは白く不透明なので、光を通した身の中では見つけやすくなります。

関門3|店舗でのスライス時の確認
店内で加工する売場では、柵を切って盛り付けるときにも目視確認が入ります。

魚を1尾買ってきて家でさばく場合、この3つの関門を1つも通っていません。 スーパーの刺身が安心できるのは、ここに理由があります。

ただし「冷凍=100%」ではない

念のため補足しておきます。

冷凍の条件は「庫内が−20℃」ではなく、**「魚の中心が−20℃に達してから24時間」**です。冷凍機の能力や魚の形によっては、これを満たしきれない場合もあります。

とはいえ、これはかなりのレアケースです。

「完全養殖」の場合はアニサキスの心配がない

アニサキスは、オキアミなどの甲殻類を魚が食べることで体内に入ります。

ところが養殖魚の多くは人工の配合飼料で育つため、アニサキスが入る経路そのものがありません。

食品安全委員会の資料でも、管理された親魚の卵から育てる完全養殖の魚からはアニサキスが検出されなかったという報告が紹介されています。

スーパーに並ぶサーモンは、まさにこの完全養殖です。ノルウェー産のアトランティックサーモンも、トラウトサーモン(ニジマス)も、卵から育てられ、餌は加熱処理されたものだけです。

そのためEUは生食用の魚に冷凍を義務づけていますが、養殖のアトランティックサーモンとニジマスだけは、この義務から免除されています。 寄生虫がいないことが確認されているためです。

近年国内で取り組まれているサバなども、生まれた時から人工で育てられている魚(完全養殖)はアニサキスの危険性はありません。

一方で、自然界から獲ってきた魚を一定期間養殖して出荷する養殖魚もいますが、これは、獲ってきた時にはすでに寄生しているものもいる可能性があります。


アニサキスが多い魚と、少ない魚

東京都が、市場に流通する113魚種1,731尾を8年かけて調べた結果を公表しています。実測値なので、これをもとに整理します。

ただし、混ぜてはいけないものが2つあります。魚そのものの寄生率と、スーパーに並ぶときにどう処理されているか、すなわち、売られているものが安全かどうかは別の話なので、列を分けます。

魚種寄生率(内臓を含む)スーパーの売場では
カツオ82.8%(29尾中24尾)船凍・解凍品が中心。たたきも冷凍が主流
サケ57.1%(7尾中4尾)「サーモン」は養殖+冷凍。「秋鮭」「紅鮭」は天然
マダイ18.9%(37尾中7尾)養殖が多い
マアジ13.6%(59尾中8尾)刺身用パックは処理済み
スルメイカ6.7%(30尾中2尾)細く切れば対処できる
ブリ4.5%(22尾中1尾)「養殖」表示なら心配は小さい
サンマ4.1%(49尾中2尾)刺身は産地中心
マイワシ0%(54尾)
ヤリイカ・アオリイカ0%
サバこの調査にデータなし食中毒の原因としては最多級。しめ鯖は凍結品を

この数字は「刺身のリスク」ではありません

この寄生率は、アニサキスの寄生がしやすい魚かどうかを表すもので、売られているものが危険かどうかではありません。

例えば、イワシやヤリイカ、アオリイカは寄生率が0%であり、そもそもあまりアニサキスが寄生しにくい種類ということがわかります。

一方で、カツオやここにはデータのないサバ類は、アニサキスが寄生しやすい種類です。ただ、スーパーに並ぶ生食用のカツオやサバ類は、船凍・解凍品が中心で、基本的に心配はいりません。

注意が必要なのは、これら寄生がしやすい魚のうち、天然物で冷凍されていない生の魚(例えば、釣りなどで釣ってくる)場合です。

補足が必要な3種類

カツオについては、2018年に食中毒が相次ぎ、厚生労働科学研究による調査が行われています。

この年に獲れた90尾を調べたところ、腹側の身からは15%の割合で見つかった一方、背側の身からは検出されませんでした。

炙りは表面だけの加熱なため、生のまま食べるよりはリスクが下がりますが、筋肉中に移動している場合もあるため、一度冷凍されていないものは背側の方が安全です。

なお2026年3月には福井県立大学が、生きているマサバの筋肉からもアニサキスを検出し、そのうち9割以上が腹側だったと報告しています。

サバについては、ぜひ知っておいていただきたいことがあります。

酢・塩・しょうゆ・わさびでは、アニサキスは死にません。 厚生労働省も農林水産省も明確にそう示しています。

「しめ鯖なら安全」は、日本の家庭にかなり広く浸透した誤解です。

市販品の多くは製造工程で凍結されていますが、自宅で生のサバを酢でしめる場合は話が別です。

主婦
主婦

しめ鯖は酢でしめてあるから安心だと思ってました…。

イカについては、表のとおり寄生率自体は高くありません。

ただし身が白く不透明で、いた場合に見つけにくい魚です。そこで有効なのが細く切ること

イカそうめんのように細く切る、あるいは身に細かく切り込みを入れると、中の幼虫を物理的に切断できます。伝統的な食べ方が、結果的に理にかなっていたわけです。


家庭でできる対策と、効かない対策

これは買ったあとの話です。まず一覧で整理します。

方法効果
冷凍(中心温度−20℃到達後24時間以上)○ 確実
加熱(中心60℃で1分以上、70℃以上なら瞬時)○ 確実
明るい場所でよく見る○ 有効
細く切る○ 有効
よく噛む△ 噛み切れれば有効。
酢でしめる/塩漬け✕ 死にません
しょうゆ・わさび✕ 死にません
アルコールに漬ける✕ 死にません

基本的にアニサキスも生き物なため、加熱すれば死滅します。

なので、生で食べる時以外は気にしなくて問題ありません。

また、口にいれてしまっても「よく噛めば死ぬ」のは事実です。

ただしアニサキスは思いのほか丈夫で、農林水産省も「噛み切ることも困難」としています。

噛み切れれば有効ですが、それだけを頼りにはしないでください。

洗う・湯引きは、どこまで有効か

洗う——身の表面に出ている個体は、流水で流せることがあります。

柵を買って自分で切る場合、切る前にさっと流すのは無意味ではありません。

ただし筋肉の内部に潜り込んだ個体は落ちません。

 なお洗うと水っぽくなるので、水気はしっかり拭き取ってください。

湯引き——皮目に熱湯をかける調理法ですが、熱が届くのは表面数ミリまでです。

皮のすぐ下にいる個体には効く場合がありますが、身の内部には届きません。

タイの湯引きもカツオのたたきも同じで、表面だけの加熱です。

生のまま食べるよりはリスクが下がりますが、それだけで安心とは考えないでください。

家庭用冷凍庫では、条件を満たせないことがある

誤解が多いのがここです。

死滅条件は「魚の中心温度が−20℃に達してから24時間」。

ところが一般的な家庭用冷凍庫の設定温度は−18℃前後で、扉の開閉のたびに庫内温度は上がります。

詰め込みすぎていれば、中心まで凍るのにも時間がかかります。

つまり、家庭用冷凍庫に一晩入れただけでは、条件を満たしているとは言い切れません。

完全に凍ってからさらに24時間以上が必要です。


刺身に白い虫を見つけたら

万が一見つけたときのために、手順も書いておきます。

  1. 箸やピンセットで取り除く
  2. 残りの切り身も1枚ずつ確認する(1匹いたなら複数いた可能性があります)
  3. 不安が残るなら、その日は加熱調理に回す
  4. 購入した店に伝える(クレームではなく情報として。同じロットが売場に残っている可能性があります)

イワシなどで見かける細長くて平たい虫は別の寄生虫で、人に害のないものが多いです。

一方、アニサキスは白色の糸状で、丸くなっていることも多いです。

なお、刺身を食べたあとに強い腹痛などが出た場合は、自己判断せず医療機関を受診してください。


手間なく安心して刺身を楽しむなら

「表示を見るのも面倒」という方には、はじめから冷凍処理を前提にした魚の宅配サービスという選択肢があります。

業務用の急速冷凍設備で凍結されているうえ、下処理が済んでいるものが多く、忙しい日でもそのまま食卓に出せます。

魚の扱いに自信がない方や、小さなお子さんがいるご家庭には現実的です。

サービスごとの違いは別の記事で比較しています。


まとめ|アニサキスは、知っていれば避けられる

ポイントを整理します。

  • スーパーの刺身でアニサキスに当たることは、かなり稀。売場に出るまでに3つの関門を通っている
  • 「解凍」表示は一度冷凍された印。アニサキス対策としては心強いサイン
  • 「完全養殖」ならまず心配ない。ただし天然の稚魚を使う養殖の場合は可能性が残る
  • 多いのはカツオ・サバ・イカ。ただし「解凍」「船凍」表示のものを選べば心配は小さい
  • 酢・塩・しょうゆ・わさびでは死なない。冷凍か加熱が確実
  • 家庭用冷凍庫は条件を満たせないことがあるので、過信しない
まこ
まこ

怖がって魚を食べないほうが、もったいないですよ。

魚は、日本人にとっていちばん身近で、いちばん栄養のある食材のひとつです。

アニサキスは怖いものではなく、知っていれば避けられるものです。

ニュースを見るたびに身構えるのではなく、鮮魚コーナーで自信を持って選べるようになっていただけたら嬉しいです。


参考資料

  • 厚生労働省「アニサキスによる食中毒を予防しましょう」
  • 農林水産省「海の幸を安全に楽しむために〜アニサキスの予防〜」
  • 農林水産省「食品安全に関するリスクプロファイルシート(寄生虫)アニサキス」
  • 食品安全委員会「食品健康影響評価のためのリスクプロファイル アニサキス」(2025年1月)
  • 東京都保健医療局「魚種別アニサキス寄生状況について(平成24年4月〜令和2年3月)」
  • 大日本水産会 魚食普及推進センター「養殖魚にアニサキスは、いない?餌や種苗(稚魚)から考える!」
  • ノルウェー食品安全庁(Mattilsynet)「養殖アトランティックサーモンとニジマスは寿司・刺身に安全」
  • 厚生労働科学特別研究事業「カツオの生食を原因とするアニサキス食中毒の発生要因の調査と予防策の確立のための研究」
  • Kodo Y. ほか「Rapid and Conventional Freezing Conditions of Fish for the Prevention of Human Anisakiasis」Food Safety, 2025(東京都健康安全研究センター)
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