魚は鮮度が命と言われたりしますが、そもそも鮮度って何?どこをみたら鮮度が良いものを見極められるの?と思う人も多いと思います。
魚は肉や野菜に比べて鮮度の低下が早い食材です。
魚は鮮度に気を使わないとすぐに腐ってしまいますし、美味しくなくなるため、魚が嫌いになってしまう可能性があります。
一方、魚の鮮度の知識をつけて見極めるポイントを知れば、美味しい魚を選ぶことができ、値段以上の価値を得ることができます。
この記事では、魚の鮮度とは何か、鮮度の変化についての話、鮮度の良い魚の見分け方を解説します。
結論としては、鮮度の良い魚の見極め方として、皮膚が鮮やかで水々しいもの、エラが鮮紅色なもの、目が透き通っているもの、お腹の張りがあるもの、ドリップが出ていないもの、などが挙げられます。
これらについて具体的に解説していきますので、参考にして今後の生活に活かしてもらえたらと思います。
鮮度とは
魚は鮮度が命と言われますが、そもそも「鮮度」とは何を指すものでしょうか。
魚の「鮮度」とは、一般的に活きの良さや、食品としての安全性を示すときに使う言葉です。
ただ、この「鮮度」には「温度」のような明確な指標がありません。
「鮮度抜群!」や「鮮度が良い or 悪い」というような使われ方はあっても、「鮮度100%」や「鮮度ゼロ」のような使い方はしませんよね。
では、何を見ることで魚の鮮度がわかるのでしょうか。
鮮度そのものを数値で表すことはできませんが、代わりになる指標として、身の硬直の度合い、におい、K値などがあります。
これらの指標について、簡単に解説しています。
身の硬直の度合い
魚の鮮度を表す指標の一つに身の硬直の度合いがあります。
生きている時や死んですぐの時は、身に柔らかさがありますが、時間が経つにつれて身が硬くなります。
魚の種類や獲れてからの温度管理などにもよりますが、例えばマアジでは、漁獲してから氷で冷やして保存すると大体10時間程度で完全に硬直して身が硬くなります。
この身が硬くなる現象のことを死後硬直と言います。
死後硬直の起こる仕組みは、死後に体の中のエネルギーが徐々に減り、筋肉を収縮ができなくなることで身が硬直します。
完全に硬直したあとは緩やかに身が柔らかくなっていき、同時に鮮度も低下して腐敗します。
ちなみに、刺身がコリコリしていて美味しいというのはこの硬直している時のものを食べているからになります。
身の硬直は鮮度が高いときに起きるので、時間が経って身が柔らかくなっているものは、鮮度も低いということになります。
におい
これはわかりやすい指標の一つかもしれません。
新鮮な魚には、不快なにおいはほとんどありません。
一方で、時間が経つにつれどんどんと生臭い匂いになっていきます。
これは、アンモニアやトリメチルアミンなどの生臭い原因となる物質が、魚の腐敗と共に体の中で作られるからです。
科学的にはこの匂いの原因となる物質の量が多いほど鮮度が悪いという一つの指標になっています。
生臭いにおいが強くなると、刺身は無理だけど焼けば食べれるという状態から、焼いても生臭くて美味しくない状態になります。
K値
難しそうな言葉が出てきましたが、K値とは鮮度を科学的に示すときによく使われる指標です。
K値とは簡単にいうと、魚が死んだあと体の中のエネルギーが徐々に分解され、鮮度の低下と共に作られる物質の割合を示したものです。
例えば、K値が20%以下なら刺身で食べられる、40%以上なら鮮度が低いので食用に向かないなどというように使われます。
K値は見た目ではわからないので、一般的にはあまり聞き慣れない言葉だと思います。
一方で、食品の研究や鮮度管理のマニュアルなど、科学的に鮮度を数字で表すときにはよく使われている指標です。
鮮度の変化
魚の鮮度は時間が経つにつれて悪くなります。
また、鮮度の変化の仕方については、魚の種類や保管する温度などによっても変わってきます。
さらに、鮮度が低下すると美味しくなくなるだけではなく、種類によっては人間にとって有害な物質が作られることもあります。
ここからは鮮度の変化について解説していきます。
魚の鮮度変化の特徴
魚の鮮度は、悪くなることはあっても良くなることはありません。
そのため、美味しく食べるにはできるだけ早く食べる必要があります。
実際、魚の鮮度の低下は肉や野菜に比べて早いことがわかっています。
その理由は、水分が多い、自己消化酵素が多い、腐りやすいエラや内臓などが付いている、などがあります。
ただ、鮮度を良くすることはできませんが、鮮度の低下を遅らせることはできます。
鮮度低下は保管の温度が低いほど遅いことが知られていますので、保管の温度を低く保つことが大切です。
例えば、K値に着目した研究では、ヒラメでは氷でしっかり冷やすことで、2日後でも刺身で問題なく食べれますが、室温20℃程度で放置すると、1日後には食用に適さないほど鮮度が下がることがわかっています。
最近では冷凍技術も発達してきているため、冷凍状態で鮮度を保ちつつ輸送することにより、全国どこでも新鮮な魚が食べられるようになってきています。
魚の種類による違い
鮮度の低下のスピードは、魚の種類によっても変わることもわかっています。
再びK値に着目した研究では、白身魚のマダラでは1日以内に生食で食べられる値を超えるのに対し、マダイでは1週間経っても生食で食べられる値を超えなかったというものがあります。
都会のスーパーで売られるまでは、獲れてから1日以上時間がかかっていることも多いので、冷凍品を除き、刺身で売られている魚は鮮度低下が遅い魚であることが多いです。
逆に刺身として馴染みがない魚は、鮮度低下が早いことが原因であることが多いです。
鮮度とうま味は一致しない
「新鮮=美味しい」というイメージを持っている人は多いと思いますが、実は、鮮度が良いからと言って、美味しいかというとそうではないかもしれません。
獲れてすぐの鮮度が最も高いときは、うまみがまだ少ない状態です。
近年、牛肉などで流行っている「熟成肉」は、低温で時間をかけて保存することで、うま味成分であるアミノ酸などを増やすということをしています。
魚も同じで、死後硬直が終わり柔らかくなっていくと同時に、うま味成分であるアミノ酸などが増えていきます。
その時、鮮度は少しずつ落ちていくため、必ずしも鮮度が高い=美味しい(うま味が多い)になるわけではないということです。
ただ、魚は肉に比べ鮮度が落ちやすいため、あまり寝かせすぎると腐敗してしまう危険も高いので注意が必要です。
鮮度が悪くなると危険
鮮度が悪くなると、美味しくなくなるだけでなく、人体にとって危険な場合もあります。
マグロやサバなどの魚は、鮮度が悪くなるとヒスタミンという物質が身の中で作られます。
このヒスタミンが高濃度に蓄積された食品を食べると、アレルギーのような食中毒が起こります。
また、加熱すれば平気だろうと思うかもしれませんが、ヒスタミンは熱に強いため、加熱しても分解されません。
対策としては、やっぱり鮮度が良いうちに食べることです。
また、ヒスタミンを生成させないためには温度管理(冷蔵など低い温度に保つ)も大切になります。
鮮度の良い魚の見分け方
それでは、売られている魚のどこを見れば鮮度がわかるのでしょうか。
先ほどのK値などの指標は見た目ではわかりません。
においや身の硬さも判断材料になりますが、ここでは、見た目で鮮度を判断するポイントを紹介します。
皮膚が鮮やかで水々しいもの
見た目の大部分を占めるのが、魚の表面の皮膚だと思います。
その皮膚が、色鮮やかで水々しいものは、鮮度が高い証拠になります。
魚は死後に血流が止まることで、皮膚の色素細胞の働きが止まり、体色の変化がなくなります。
そして、色がどんどん薄くなっていき、粘液も出なくなるため水々しさも失われていきます。
パッと見てキレイで美味しそうな魚というのは、やはり鮮度も良いということになります。
エラが鮮紅色なもの
エラの色を見ることができるのであればチェックしておきたいポイントです。
鮮度の良い魚のエラはキレイな鮮紅色をしていて、いかにも新鮮そうに見えると思います。
エラは、水中の酸素を体に取り込み血液に受け渡す場所で、血液がたくさん流れています。
やはりエラも、死後は血流が止まることで、血液が黒ずんできて、エラ自体も色が悪くなってきます。
また、エラには細菌がたくさんついているため、時間と共に細菌が増殖し、細菌のはたらきにより腐敗して見た目も悪くなっていきます。
そのため、エラは鮮度を見分けるための1つのポイントになります。
目が透き通っているもの
目の透明度も簡単に見分けられるポイントです。
新鮮な魚の目は透き通っていて、キレイな目をしています。
一方、時間が経つにつれて目の奥が濁り、白っぽく見えると思います。
目の濁りやすさも種類によって変わりますが、同じ魚であれば、主に目の透き通っている魚は新鮮だということがわかります。
ただ、魚の種類によっては、目が白くなりやすい魚もいますので、他のポイントも合わせて見るようにしましょう。
お腹の張りがあるもの
お腹の張りも重要なポイントの一つです。
新鮮なうちは、内臓もしっかり形を保っていて、水分も抜けておらず、お腹に張りがある状態になっています。
時間が経つと、魚自身が持っている消化酵素などにより、自らの内臓が分解されていきます。
これにより、内臓もドロドロになって生臭い匂いもどんどんと増していきます。
魚はお腹から悪くなっていくことが多いため、早めの内臓処理は鮮度保持に欠かせないポイントになります。
ドリップが出ていないもの
お腹の張りとも関連しますが、魚自身の消化酵素により内臓を分解する、あるいは、時間の経過で身体中の細胞が壊れていくことによって、水分が体の外に出ていきます。
この水分のことをドリップと言います。
ドリップの中には、うまみの成分も一緒に入っているので、鮮度低下と共に、うまみも失われていきます。
スーパーのパックで売られている商品ではよくわかりますが、半額品など時間が経っているものは、ドリップが出ていることが多いです。
美味しい魚を求めるのであれば、ドリップが出ていない魚を選ぶようにしましょう。
まとめ
魚の鮮度を表す指標としては、身の硬直の度合い、におい、K値などがあります。
これらとは別に、魚の新鮮さを見た目で判断する主なポイントは以下のとおりです。
・皮膚が鮮やかで水々しいもの
・エラが鮮紅色なもの
・目が透き通っているもの
・お腹の張りがあるもの
・ドリップが出ていないもの
このように、見た目のポイントはいくつかありますが、いずれのポイントもまとめると、「パッと見で美味しそうに見えるもの」ということになるかと思います。
難しく考えず、見た目で美味しそうと思う魚は、是非買ってみましょう。
また、機会があれば、海の近くで新鮮な魚を扱う魚屋さんを探してみてください。
質の良い魚をたくさん見ることで、自然と鮮度の良い魚を選べるようになると思います。